ZERONIでは、「バーチャルなベンダー」とインターフェース(I/F)構築を完結できるSaaSプロダクト「taias I/F(タイアス インターフェース)」を開発しています。

バーチャルなベンダーという発想はどこから生まれたのか。そしてBtoBで使われる業務アプリケーションに、シミュレーションゲームの要素やゲーミフィケーションをどう取り入れたのか。

4人のプロダクトデザイン担当エンジニアに、「taias I/F」の開発ストーリーや、開発者体験を聞きました。
プロフィール(写真左から)

那須 浩一郎 Koichiro Nasu プロダクトデザイン
調達管理を中心としたパッケージ製品の顧客向け導入コンサルタントやチームリーダーを担当。その後、外資系コンサルティングファームを経て、ZERONIに参画。現在は「taias I/F」のガイダンス部分のシナリオ設計などを担い、SI事業ではプロジェクト管理を担当している。

岩根 周平 Shuhei Iwane プロダクトデザイン
前職では、調達管理系パッケージ製品開発のチームリーダーとして、フロントエンドの技術基盤やコンポーネントのライブラリなどの整備に携わる。当時も青嶋と同じチームに所属。2020年1月にZERONIにジョインし、「taias I/F」のフロントエンド開発や技術選定などに従事。

髙木 眞之介 Shinnosuke Takagi プロダクトデザイン
販売管理系パッケージ製品の開発マネージャーや、アドテクノロジー関連のスタートアップなどで活躍した後、ZERONIに参画。現在は、主にサーバーサイドの技術周りを担当。

青嶋 正英 Masahide Aoshima プロダクトデザイン
以前は、調達管理にかかわるパッケージ製品のプロダクトオーナーを担当。ZERONIに参画後は開発・実装はもちろんのこと、プロダクトのコンセプト設計やシナリオ設計、画面構成などUI・UXをメインに手掛ける。2023年3月にCPO(プロダクト総責任者)に就任。

「ベンダーの無人化」で、コストを適正化。ベンダー依存から脱却

── そもそも、「taias I/F」とはどんなコンセプトで生まれたプロダクトなんですか。

青嶋:「ベンダーの無人化で、IT投資にかかるコストを適正化する」ことを掲げています。「taias I/F」上でバーチャルコンサルタントと一緒にプロジェクトを進めることで、要件定義や仕様書ができあがり、ベンダーに依存せず、システム間を連携するインターフェース(I/F)構築が進められるようになります。

最終的には、ITに関する知識がほとんどなくても、ノーコードで、しかも自社内でI/F構築できるようになることを目指しています。

僕たちはもともと、いろんな事業会社の方々とプロジェクトをご一緒していて、IT投資やベンダーにかかっている人的、金銭的コストが適正でないと感じることが多かったんです。中でも、I/F構築の領域ではそれが顕著です。インターフェースの構築は、どうしても数に比例した人月のコストがかかるため、時として、システム導入そのものの費用より、I/F構築費用の方が高額になることすらありました。

髙木:もともと必要なインターフェースは10本だったのに、開発中に20本になってしまうことがよくあったんですよね。そのたびに、お客さまに予算を取り直してもらったり、仕様を変えたりして、開発スケジュールが遅れることがありました。そこにかなりの煩わしさを感じていたのです。

青嶋:昨今、バーティカルSaaSプロダクトが増えるとともに、システム連携、データ連携のニーズも増えていて。ここは今後、よりニーズも重要性も高まる領域です。

事業会社の方々にもう少しシステムに関する知見が増えたり、ノーコードで簡単に操作できるツールがあったりすれば、大幅にコストを下げられるのではないかと考えました。

従来のインターフェース構築に課題意識を感じているという青嶋

岩根:最近ではETLツールやデータウェアハウスも充実しているので、事業会社の情報システム部でもつくれるんじゃないの、と思う方もいるかもしれません。しかし、ツールがあっても、知識がなければつくれませんし、ツールを設定するための要件定義などに結局多額のコストがかかるケースが多いんです。

髙木:今回、「taias I/F」のユーザーターゲットは「数百人規模の会社で、はじめて情報システム部に配属された人」に置いています。

本業のスキルが高くドメイン知識も豊富ですが、ITについてはほとんどわからない、という方たちを対象にしました。プロトコル、HTTPという基本的な単語がわからなくても使えるようにしたいと考えています。

初心者でも使いこなせるプロダクトにしたいという髙木

ゲームの要素を取り入れ、「クエスト」をこなしてできるI/F構築

── 初心者の方でも使いこなせるのは心強いですね。

髙木:ここは本当に迷ったのですが、ユーザーが「わからないから、ベンダーに依頼しよう」となったら本末転倒で、ベンダー依存に戻ってしまいます。

なので、例えばITの知識がないうちの家族が触っても使いこなせるかな、ということは常に意識しています。

── ほとんどIT初心者のユーザーにも使ってもらうようにするために、どんな工夫をされましたか。

岩根:ゲーム性の高いフロントエンドのUI/UXを構築することです。

仕事で使う業務アプリケーションの場合、どうしても義務感でログインすることが多くなると思います。でも、仕事がないときでもログインしたくなるUIにしたかった。

そこで、UIにシミュレーションゲームやRPGの要素を取り入れ、ゲーミフィケーションの色合いを強くしました。たとえば、ユーザーがこなすべきタスクを「クエスト」と名付け、ポジティブに、自主的にタスクに取り組みたくなるUI/UXにしています。

自身もゲームが大好きで、フロントエンドの開発に大きなやりがいを感じている岩根

岩根:プロジェクトは、クエストを完了すると得られる「バッジ」をそろえることで終わる、「バッジ集め」としました。そうすることで、プロジェクトの進捗率や、クエスト完了時の表現も、ゲーム感覚で楽しめる工夫をしています。

それから、「バーチャルなベンダー」とI/F構築する上で発生する様々な案内の表現も、プロジェクトの役割ごとにキャラクター分けをしました。具体的には、サポート、PM、トレーナーといった実際のプロジェクトに近い役割別に、アバターや口調などを変えています。

テストのときに実際使ってみたのですが、プロダクトの向こう側に本当に担当コンサルタントがいるような感覚になり、「バーチャルなベンダー」というコンセプトが表現できている手応えを感じました。

2人のキャラクターが構築をサポート

── こうしたゲーム性の高いUI/UXは、業務アプリケーションでは珍しいですよね。何を参考にしているのですか。

岩根:僕はもともとゲームが好きで、ポケモンやドラクエ、あとはスマホアプリのソーシャルゲームなどをやり込んで、UI/UXの参考にしています。

那須:みんなゲーム好きなので、ミーティングやブレストのときに「あのゲームの、この画面みたいなUIにしたい」という話で認識が合うことも多いです。

西浦さんの声かけで、みんなで同じソーシャルゲームをやり込んだこともありました。

導入コンサルタントとしての経験を、チュートリアルやガイドの作成に生かしているという那須

全てプロダクトで解決すればいいわけじゃない。あえて余白を残して

── 開発にあたって、大切にしている「軸」とはどんなことですか。あるいは、「これはぜったいにやらない」と決めているのはどんなことですか。

青嶋:「ベンダーの無人化」というコンセプトをぶらさないこと。それから、I/F構築の「体験」を変えないようにすることです。

便利な機能を盛り込みすぎて「なんでも『taias I/F』が解決してくれる」とか、逆に専門的な知識が必要になりすぎて「やっぱりベンダーに依頼しよう」となってはよくないと思っています。

最終的には、ユーザーが自社システムの構築や運用をある程度自分でできるようになること。事業会社側で目的やゴールなどを考えるプロセスは残しておいた方がいいんです。

どんなに便利な機能を開発しても、事業会社側が検討すべき、決断すべきことは、事業会社側が意思決定するプロダクトにすることを心がけました。その部分は、ベンダーに発注したときと同じようにすべきだと考えました。

青嶋は、ユーザーにとってのI/F構築の体験をあえて「変えない」ことが大切だと話す

那須:ユーザー自身が「主体的に」I/F構築できるようにするというコンセプトは大事にしていきたいですよね。

僕は「I/Fって、こうやって構築していくんですよ」とご案内するガイダンス機能を担当しているのですが、これまでのシステム導入で相対してきたユーザーの顔を思い浮かべながら「どんなお客様でも主体的なI/F構築ができるようになっているかな…」「この表現はちゃんと伝わるかな…」などと考えながら、細かくチューニングしています。

必要なクエストが並んでいて、右上のバッチを集めて完了させる

多様でエッヂのある、メンバーの発想にインスパイア

── スピーディかつ質の高いプロダクトを開発するために、どのような仕組みを取り入れていますか。

岩根:西浦さんや、プロダクトデザインみんなとの「壁打ち」会はすごく大事にしています。週に1~2回くらい、多いときは2日に一度は、開発途中のものをレビューしていますね。

青嶋:まったくイメージが湧かなくて行き詰まったときによくやる、「俺のシリーズ」もいいですよね(笑)。

たとえば、アプリケーションのトップ画面にどんな機能をいれたらいいか迷ってしまったとき、みんなで「俺の考える最高のトップ画面」を持ち寄るんですよ。開発していると、全部の機能を盛り込みたくなったり、いろんな選択肢がある中で機能の取捨選択がなかなかできなかったりするじゃないですか。

そこで全員が同じ画面について考えてきて発表しあい、トップ画面に必要な要素や機能をディスカッションするんです。

那須:それぞれ大事にしているポイントが微妙に異なることもあります。フォーマットも、手描きやパワーポイントだったり、figmaだったりいろいろですし。みんなの意見にすごくインスパイアされます。「俺のシリーズ」は、製品の方向性を検討する手段としてとても有効だと思います。

 

那須は得意とするコンサルティングのみならず、開発チームの一員としてゼロからつくりあげるプロセスに関われることに喜びを感じている

青嶋:とにかくすばやくトライアンドエラーできることが大事ですよね。

岩根:ええ。とくにコンセプトをかためるフェーズでは、フロントエンドのReactの世界だけでアプリがつくりきれるように超軽量の仕組みをつくったのは、スピーディな開発につながっていると思います。

岩根は「taias I/F」の開発を通じて、フロントエンド開発が一番楽しいということに改めて気づいたと話す

想像の150%のプロダクトができあがる喜び

── ZERONIの開発者体験として、どんなところに魅力を感じていますか。

青嶋:これまではプロダクトオーナーだったので、自分で手を動かすことはそれほどありませんでした。いまは自らプロダクトをデザインしているので、自分の考えを表現できるようになったと思います。

製品のグランドデザインと、開発の実務の両方に携われているのが楽しいですね。

高木:以前いたスタートアップでは新人からベテランまでメンバーの力量が様々で、それぞれに合わせなければならないのが、意外にストレスでした。

いまは少人数でも、一人ひとりがエンジニアやコンサルタントとして幅広い知見・スキルを持っていて、その上で各自ずばぬけた得意領域もあるドリームチームです。このメンバーがコラボレーションして、それぞれの得意領域が組み合わされば、プロダクトは想像の150%くらいのクオリティになる。やりたいことが、超高水準、超ハイスピードで叶っていくところに、面白さを感じています。

ZERONIのメンバーと働くことが楽しいと感じている髙木

岩根:意思決定がはやいですよね。エンジニアの意思や、やりたいという思いが尊重されますし。僕自身はフロントエンドの開発が好きなので、その領域でやりたいことを自由な発想でどんどん進められるのが楽しいなと思います。

「taias I/F」の開発を通じて、「あったらいいな」と思う機能をどんどん組み込んでいくのが好きだという、自分の新たな一面に気づくこともできました。

那須:僕自身は前職はエンジニアというよりは、コンサルタントなのですが、開発している様子や問題解決までのスピードを見ていて、本当に他にないプロフェッショナルなメンバーの集まりだなと感じてます。全員がプロダクトオーナーかマネジャー経験のある開発チームは、なかなかありません。

── これから先、「taias I/F」をどんなプロダクトにしていきたいですか。

那須:既存のETLツールの二番煎じではなく、確実にユーザーの自走をサポートするプロダクトにしていきたいですね。ユーザーが自らつくるI/Fツール、というコアな価値は、これからもぶらさずにいたいと考えています。

青嶋:こんなに安価でI/F構築ができるんだと驚いてもらえるようなプロダクトにしたいですね。さらに、安価だからということだけではなく、実際に「taias I/F」を使ってI/Fを構築した現場の方自身にも使ってよかったと思ってもらえたらうれしいなと思います。

高木:ユーザーが「本当に集中したい業務」に集中できる環境づくりを助けるプロダクトにしていきたいです。ITベンダーと違って、事業会社にはそもそも本業があります。これまでI/F構築にかかっていた時間や費用、人的リソースを本業にかけられるようにサポートできる製品にしたい。

そうすれば、日本企業がグローバルで存在感をもって戦える礎をつくれるのではないかと思います。

岩根:「使うのが楽しい!」と思ってもらえるプロダクトにしたいですね。「用もないのにログインしたくなる」感覚というか、ログインするとハッピーになれるというか。「仕事だから使います」というんじゃなくて、プロダクトを使う楽しさを付加価値として実装していきたいなと思っています。

撮影:赤松洋太/編集・執筆:石川香苗子

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