「昨日までなかったものを、明日の当たり前へ」というパーパスを掲げる、ZERONI(ゼロニ)。技術やトレンドの移り変わりが激しいIT業界で、社会に横たわる課題を根本的に解決すべく、顧客と中長期的に向き合っています。 顧客とも社員とも長く歩み続けるため、サステナブルな仕事環境を整えようと経営に取り組む代表取締役の西浦 智博に話を聞きました。

ベンダー依存のIT投資からいかに脱却するか

私はこれまで、会計・SCM(サプライチェーンマネジメント)などの領域で、20年近くパッケージ製品開発に携わってきました。その中で感じていたのは、いくらパッケージ製品を開発しても、ベンダー依存からの脱却が難しいIT業界の実情です。

いまや多様なSaaSプロダクトが登場し、すべてのシステムをゼロからつくり込む時代ではなくなりつつあります。にもかかわらず、システム導入時や利用時にはベンダーによる手厚いサポートが不可欠で、「依存」状態は解消されていません。

日本におけるIT投資にかかるコストの中心は、外注費です。しかし企業のIT導入担当者がベンダーとの関係を改善しようと思っても、どこから手をつけていいかわからない。結局ベンダーへ支払うコストはそれほど減らず、適正なIT投資だとは言い難い状況になっています。

ならばベンダーが担っている業務のうち、定型化が可能な領域については、人の代わりになるシステムを提供できないか。そうすれば、ベンダーの業務を「無人化」できるのではないかと考えました。

つまり専門性の高くない領域についてはノーコード・ローコードなどを活用してユーザー自ら完結できるようにする。そうすることで、日本におけるIT投資の課題を解決できるのではないかと思ったのです。

こうした課題解決の第1弾が、システムを使って要件定義を「無人で」行い、その成果物を用いてノーコードでインターフェース構築をするSaaSプロダクトです。企業の情報システム担当者は、シミュレーションに沿って要件定義を進めるだけで、自らインターフェース構築ができるようになります。もちろん、急な要件変更にも対応可能。自社でインターフェース構築を完結できるようになるのです。

このSaaSプロダクトを皮切りに、IT業界のベンダー依存体質を変えていきます。

こうした世界観が実現すれば、日本のIT投資には無駄が少なくなり、人的・時間的コストも、そして費用も適正化できるのではないでしょうか。さらには、SaaSの普及も加速するはずです。

限界を決めず、社会の困りごとを「助けたい」

このような現状を変えるべく、ZERONIでは「昨日までなかったものを、明日の当たり前へ」というパーパスを掲げています。このパーパスには、まだ解決できていない社会課題を根本から解決し、世の中に広げていきたいという思いが込められています。

当社の真ん中にあるのは、いろんな人の困りごとを「助けたい」という思いです。100%自己資本で運営していることもあり、利益だけを追い求める必要がありません。いままさに課題に直面している情報システム部門のみなさんを、限界を決めずとことん助けられたらと考えています。

日本のITをより良くするためには何をすればいいのだろう──?

その根本的な問いから出発し、ITの力で社会課題を解決したい。そして、その課題を解決するための製品を胸を張って開発し、世の中に広げていきたい。

新しいプロダクトを開発する際、よく「0→1(ゼロイチ)」ということばを使いますが、それだけでは物足りません。その製品が本当に社会課題を解決するなら、世の中に広げるところまで手掛けたい。そこに、「0から1、そして2へ」というバリューと、ZERONIという社名の由来があります。

根本的な課題をとらえ、バリューが発揮できる環境を

このような思いを叶えるべく共に働くのは、10年以上パッケージ製品開発の最前線で開発を経験してきたスペシャリストたちです。一人ひとりがプロダクトマネジャーとして豊富な経験を持ち、ピープルマネジメントもできる。顧客の業務背景や課題を深く理解した上で、ITの力で顧客の困りごとを解決する力も高い。自律的にプロジェクトを進めていける頼もしいメンバーばかりです。

数百人のメンバーをマネジメントし、多くのコードレビューを行ってきた自分から見ても、長く一緒に働いていきたいと感じる、非常に優秀な人たちです。

だからこそ、社員をとことん大切にしたい。

利益を求めるがために、いたずらに取引先や案件の数を増やすようなことはしません。短納期の案件を、やみくもに受注することもありません。根本的な課題が見えているにもかかわらず、目先の手段だけ講じるような案件も引き受けません。そういう場合は、「当社に頼まない方がよいかもしれません」とはっきりお伝えすることすらあります。

理想の状態から逆算し、長期的な目線で根本的な課題を捉える。そしてそれを解決するまでやりきる。その道のりは、簡単なプロセスではありません。けれど中長期的に見てボトルネックになるようなら、根本的に解決した方がいい。

その分、長期間のプロジェクトになることもありますし、通常よりも丁寧にプロジェクトを進める必要がある場合もある。

本当に良いと思っているものをつくれず、製品の理想像を叶えられないのなら会社組織である必要はありません。こうした姿勢が大手企業から長く信頼していただける理由なのだと考えています。

そのためにも、社員を大切にしていきたいのです。

10年、20年と続けていけるサステナブルな企業に

私自身、これまでハードワークを続けてきた時期も長くありました。けれど当時から、この働き方をずっと続けることはできない、いつか燃え尽きてしまうのではないかという危機感を抱いていました。あるいは、自分はできても、実際はできない人の方が多いんじゃないか、と思うこともありました。

優秀な人たちと長く働くためには、ヘルスケアや家庭など生きていくためのベースが重要です。このメンバーと10年、20年と働いていきたいから、長く続けられる仕事環境を用意したい。

ですから当社の場合、働きやすさに力点を置いています。フルフレックス制を取り、誰がいつ休みを取ってもいい体制を敷いています。何かあったときは、チームの誰かが吸収できるよう、1つの機能を1.5~2人で開発するようにしています。

1つの機能を1人が担当した方がよいケースもあると思いますが、あえてわざと複数人で担当することでサポート体制を充実させています。これは、一人ひとりの社員がシニアマネジャー、プロダクトマネジャークラスで、自立しているからできることだとも思います。

基本的に仕事の成果は1週間単位で見ていて、今日は16時位まで、明日は子どもが寝た後働くといった具合に、その日の都合に応じて、働き方を自由に調整することが可能です。

そのせいか、夫婦共に当社で働いている方もいれば、未就学児のお子さんがいらっしゃる方もいます。幼稚園や保育園、学校の休園やお子さんの体調不良、あるいは介護など家庭の事情であまり勤務できない週があっても、他のメンバーと連携しあってカバーできる環境があります。

ZERONIを10年、20年続けていくために、「持続可能な企業のあり方」を考えたい。サステナビリティのために必要なのは、いたずらに企業規模を大きくしたり、イグジットしたりすることではないと考えています。当社のバリューやパーパスに共感してくださるお客様や社員とじっくり向き合い、中長期的に顧客の課題を解決していきたい。

根本的な課題を解決していきたいというこのパーパスを大切にしていけるよう、地に足のついた経営を続けていきたいですね。

写真:赤松洋太/ 編集・執筆:石川香苗子

top keyboard_arrow_right topics keyboard_arrow_right

ceointerview